「本屋のあかり」紹介本 『ビル・カニンガム』
272 『Fashion Climbing ビル・カニンガムのファッション哲学、そのすべて』 ビル・カニンガム 渡辺佐智江 訳 朝日新聞出版 2300円 『 Bill Cunningham On The Street Five Decades of Iconic Photography 』
まず、最初に私がビル・カニンガムさんを知ったのは2013年7月にシネマテークで観た「ビル・カニンガム&ニューヨーク」という映画がきっかけでした。もうこれスンバラしかったんですよ!好きすぎて手元に置いて見返したくてのちにDVDを買ってしまったくらいです。
この映画はアメリカで2010年に作られたもので、彼はその時80歳でした。NYタイムズの「オン・ザ・ストリート」という毎週のファッションコラムと「イブニング・アワーズ」というチャリティーパーティーの様子を写した社交欄の写真と記事を現役で書いていました。そして、毎日ニューヨークの街に出て道行く人を撮り続けました。彼は言いました「最高のファッションショーは常にストリートにある」と。いつもフランスの労働者が着るブルーのジャケットを着て、カメラを片手に自転車を乗り回している姿のまぁ、かっこいいこと。 いっつもカフェでサンドイッチとコーヒーで、ろくなもの食べてないのに87歳まで生きたなんて、「やっぱり人は好きなことして生きていると長生きするって絶対に本当のことだな!」と確信しました。
彼のその審美眼は本物で、あのアメリカ版「ヴォーグ」編集長アナ・ウインターが、どこにいても彼が呼び止めた時にだけ立ち止まり、写真を取られることを許すんですよ!そして、インタビューの中でも「だって私たち、彼のために毎朝、着るのよ」って言ってるんですよ~。そして「彼はね、コレクションでもストリートでも他の人とは見ているところが違うのよ。その時写したものが、半年後には世界のトレンドになるのよ!」ってベタ褒めしてました。
パリでの有名ブランドのファッションショーでも、セキュリティーに止められて中に入れないでいる彼を見つけたブランド関係者が「このかたは世界一重要な人なんだよ!」と言って飛んできて連れて行っていました。しかもそれらを一切鼻にかけず、いつでも子どものように無邪気で誠実なんです。誰かを貶めるような写真は絶対撮らないし、タダでもらった服で着飾った有名人には興味がなく、自分のお金で買った服を自分流に着こなしている一般人が大好きでした。お金にも無頓着で、住んでいるところはお風呂とトイレが共同のカーネギーホールの屋根裏のような場所でした。うん本物ですね。
そんな彼が、写真を撮ったりコラムを書いたりする前の幼少期からのお話を綴ったのが本書です。表紙の内側に書かれていた要約によると・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、この本にはデザイナーの三宅一生さんがこういう言葉を贈っています。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最後に、もう一冊を紹介したいのですが、実はこの『Fashion Climbing』を本屋さんで見つける前に、偶然Amazonで
『 Bill Cunningham On The Street Five Decades of Iconic Photography 』象徴的な写真の50年という題の洋書を見つけ、中身には彼が撮りためたスナップ写真が多数載っていると書いてあったので8000円もしたのですが、ポチってしまったんです。もうこの写真集を見つけたときには大興奮しました。2019年発刊なので、彼の死後に作られたのですね。結論、買ってよかったです。写真がいっぱいなのでペラペラめくって眺めています。これで、私はビルのファッション哲学から、撮った写真やお仕事の様子の映像まで知れたので相当マニアになれたかなと思います。でも、彼の親しいお友達もインタビューで言っていましたが、彼のプライベートなところはホントのところ全くわからないままなのです。まぁ、でもそこが良いのですけどね。彼らしくて。
本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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