• 本屋のあかり
執筆者:続木あかり
2021.12.26

「本屋のあかり」紹介本 「今年のまとめ」

「今年一年間で売った本たち」

本の家は、お店に来てくれるお客様を待っているだけではとてもとても食べてはいけないので、色々とやっていますが、その一つとして本を段ボールに詰めて保育園に売りに行っています。
とても熱心に本を保育に取り入れている園にお声をかけていただいているので、高崎市内だけではなく、前橋、玉村、渋川、富岡いろんな場所に車で行けるようになりました。年に二回くらいが基本なのですが、事前にこんな本が今クラスで人気なので持ってきてくださいなどとリクエストを頂いたりした本をなるべく揃えて伺います。昨年は、コロナの影響でほとんどの園がこの絵本販売が中止になってしまったので、今年の冬になりやっと以前のように声をかけていただくようになり、たどり着いた先で「あー!本屋さんだ。やったー」なんて園児たちが声をかけてくれた時は胸にグッと込み上げてくるものがありました。親御さんのお迎えに合わせて夕方4時頃から6時くらいまでの間にテーブルと椅子をお借りし、絵本を目一杯広げて、子どもたちに見てもらいそして買ってもらいます。なんだかんだ、園の特徴などいろんなことが垣間見れて毎回とても疲れますが、楽しいです。『せいめいのれきし』なんていう、絵本ではありますがとても難しい本を「買ってくれー」って言って親に泣きついている子を見ると「すごいな」っていつも思います。どんな大人に育つんだろなんて。
ということで今回は、私がこの冬の絵本販売でおすすめした絵本!をご紹介します。まず、おすすめというか定番として必ず毎回持って行き、必ず売れる絵本から。『11ぴきのねこ』『からすのパンやさん』『めっきらもっきらどおんどん』『エルマーのぼうけん』このあたりですかね?保育園でいつも読んでいるので子どもは手に取りやすく、親も知っているので買いやすいのだと思います。ちなみに、私の行っている保育園は、一般的な公立の保育園と少し違います。絵本をたくさん読み聞かせすることはもちろんですが、外遊びやリズム遊びに歌、などなど、毎日泥だらけで走り回っています。私は、これが本当の子どもの姿だなといつも思っています。まぁ、それはいいとして、山登りをしたり博物館に行ったりすると好きになるのが「化石、恐竜、鉱物」ですよね。「星、星座」なんてのも気になりますね。リクエストに答えて、いつもいわゆる図鑑を持って行ったりするのですが、それだけではなく何かいい本はないだろうかと探しまして、今年は『いしのはなし きれいでふしぎでやくにたつ、ちいさなちきゅう』という絵本や『こども鉱物図鑑』なんて本を持って行ってみました。案の定とても人気がありました。こんな時は、よかった、当たったと嬉しくなりますね。
他には、リズム遊びや演劇、オペラなどのうたを歌っているだけあって『チポリーノの冒険』『森はいきている』『パパゲーノ パパゲーナ』『あんぱるぬゆんた』などの絵本が売れます。誰もが読む本ではないので、すぐに品切れ・重版未定になって手に入らなくなってしまうというのが悩みの種ですけれど。
次はこの1、2年に出版された新刊でよく売れたなと感じた本たちです。五味太郎さんの『ひよこはにげます』は、帯に「きんぎょはにげる、ひよこもにげる。300万部超の名作絵本『きんぎょがにげた』から40年。今度はひよこがにげました!」と書いてあるのですが、あら!続編!と思って手に取った大人は、騙された!と思うのじゃないか?とちょっと心配になりました。だって、逃げるけど隠れないんだもの。探す絵本ではないのです。まぁでも、こう一筋縄でいかないところが五味太郎らしくてファンにはたまらないのか?とも思いました。次は『たいこ』と『おもち』です。タイトルだけでは何やら全然わからないと思うのですが、2、3歳向けの絵本なのでお話はメチャクチャ単純です。『たいこ』は、大きなたいこがあって猫さんがトントンポコポコ叩いていると、次々と「なかまにいれて」とやってきて「いいよ」と仲良くみんなで叩いていたら、ワニさんが「うるさいぞー、ガオー」って蹴散らしてしまって、だあれも居なくなったので「ゴンゴン叩いてガオガオ一人で楽しんでいたら、みんながまた集まってきちゃって「嫌だな、ガオ」って思ったんだけどみんなで「トン、ポコ、ペタ、ボン」って叩いてみたらすっごく楽しくなりましたってお話です。『おもち』なんて、網の上でおもちを焼いたら「ぷぅーぷくっぷくぷく」っておおきくふくらんで「やけたやけた、おもちがやけた」「たくさんやいて、しょうゆつけたり、きな粉まぶしたりして、いただきまーす」っていう絵本です。でも、この何がすごいかって『たいこ』の方は銅版画で、『おもち』の方は木版画で描かれているんです。完成度が高くて、すごく素敵です。全く子供騙しではありませんよ。特に、『おもち』の方の繊細さときたらある保育園の先生は「やだこれほんとに木版画?、バカなんじゃない?すごすぎる。」って叫んだくらいよくできています。きな粉なんかふぅーって吹いたら粉がブワァッて飛んでいきそうです。繊細さで言ったら負けてないのが『まどのむこうのくだものなあに?』です。偶然にもうちの母が以前、福音館書店にお邪魔した際にこの絵本の原画を見せてもらうことができたそうなのですが「あまりの精密さに、息が止まった。だって、髪の毛一本くらいの筆でこのメロンのツルの毛とかキウイの毛とかを一ページにつき、ひと月かけて描いていくんだって。」と聞きました。ほんと美しくて美味しそうなんでぜひ見て欲しいです。他には、この番組でも以前ご紹介しましたjunaidaさんの新刊『街どろぼう』がまたまたよかったのでどこの園にも持って行きました。よく売れました。B5サイズくらいの大きさで布張りなのに1500円なんて安いよねと思っちゃいます。内容も、大きな山のてっぺんに一人で暮らす巨人が寂しくて寂しくてしょうがなくなってしまい、ある夜、山のふもとの街まで降りていっていっけんの家をこっそり持ち帰ってきてしまったのです。でも、朝になって「一緒に暮らそう。欲しいものがあったらあげるから」って言うとみんな、「つまらないから友達のお家も持ってきて!」って答えるんです。それでどんどん巨人は夜になるとお家を担いで持ってくるうちに周りはにぎやかになってくるんだけど、相変わらず巨人は寂しいままなのでした。そこで、巨人はある夜に一人で山を降りてしまいます。するとふもとには、街の誰からも呼ばれなかった少年がひとりでポツンと住む家がありました。そこで、巨人と少年はふたりで仲良く暮らしましたとさ。というお話です。これを5、6歳の子が欲しいと言ってレジまで持って来るんですよ!どう思います?今の子は、疲れてるのかな?逃げたいことでもあるのかな?いやいや、きっと人の気持ちのわかる心の優しい子に違いない。なんて考えてしまいます。他にも、いつもたくさん本を選んで持って行くのです。段ボール箱7、8個になります。正直、運ぶのは重いし、並べられた絵本を乱暴にめくる子がいると本は痛むし、大変なんですけど。それにも増して元気もらえるし、店にいるだけだと「もう本なんて誰も読まないし、売れないし、ダメかも。」なんて挫けそうになったりもするけれど行くと、こんなに喜んでもらえるならまだやれるかもなんて気分にもなります。
最後に、今年ももう終わるので本の家の一番のトピックニュースをここで。なんと!前橋に本の家2ができました!!経営は、朝日印刷と言う会社の社長さん夫婦がやっていまして、先月の1日からオープンしています。場所は、前橋市千代田町2ー7ー25で前橋テルサの裏にあります。真っ赤な扉と野村たかあきさんデザインの看板が目印です。まちなかのすごくいいところにある、「まちの絵本屋さん」です。姉妹店ができた!なんて言うと、すごく儲かっているのでは?と思われると思いますが、違いますから~。石川社長さんの話によると、印刷会社という仕事柄「紙の本」や「活字」が自分は身近にあったので本に親しむことができたのだけれど、今の子どもたちはどんどん紙の文化から離れていっている様な気がすると。子どもの時から本に親しめる土壌を作りたい、そして前橋の文化向上に役立ちたいという想いで本屋さんを始めたい、と、直接会って聞いていくうちに心から応援したいという気持ちになりびっくりするほど儲からないですよ!「いいんです。趣味だと思ってやります。」ということで始められました。ちゃんとした取り次ぎを通した仕入れをする本屋さんって実は始めるのやたらと難しいので、本の家から仕入れて販売するという形に落ち着きました。今のところは、たくさんのお客様がいらしてくれている様です。ほっと一安心ってところですかね?うちのような店に声をかけてくれたは、曲がりなりにも37年間、細々と本屋をやってきたからだということなのでしょうか?少しは本好きの皆さんの耳に「本の家」という単語が残っていたのかなと自画自賛しております。これからも、「本の家」と「本の家2」をどうぞよろしくお願いいたします。

定番絵本たち
リズムをしたり、うたったり。
五味太郎とjunaida
木版画、銅版画、繊細な絵の本たち
あかり
あかり

本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
みなさん、こんにちは。絵本と童話本の家 續木あかりです。
この番組は、毎回私が気になった絵本から読み物まで、内容を読んだりしながらご紹介していきます。そして、オススメの一曲も。お気軽に聞いていただけたら嬉しいです。
毎週月曜日の9:30から15分間。木曜日の14:00と土曜日の17:00に再放送があります。

この記事をシェア

同じカテゴリーの最新記事

さらに見る