本屋のあかり紹介本『走れ、風のように』
『走れ、風のように』 マイケル・モーパーゴ作 佐藤見果夢 訳 評論社 1320円
あーもう、見ていただきたいですこの表紙の美しい犬の絵!
この本の主人公は、グレイハウンドという犬種の犬なんですが、私大好きなんです、こういう短い毛で大きくてすらっと足が長くて走るのが早い犬!物凄くイケメンです。人間じゃないけど。かっこいい!
それから、このお話、よくある子どものためのフワフワっと甘いストーリーじゃないんですよ!結構過酷な運命を背負った犬の物語なのです。途中までは「あー、もうかわいそうだから読むのやめようかな」なんて読み始めたことを後悔するほどでした。ダメなんですよね私、犬がかわいそうなお話って最初から無理だ!やめよう!と思って読むのやめちゃうんです。心が耐えられなくなるんで。でも今回は頑張って最後まで読みました。
このお話は、パトリックという男の子が学校に行く途中に運河に捨てられている子犬たちを見つけるところから始まります。勇敢にも川に飛び込み子犬たちを救出したその日から、パトリックは周りの子から一目置かれる存在となり、助けた子犬の一匹を飼うという願いも叶い、ベストメイトと名付けた犬とパトリックは毎日楽しい日々を送っていました。しかし、周りにいる悪い大人のせいで飼い犬ベストメイトが連れ去られ、ドッグレースのレース犬として売られてしまいます。そして、売られた先の家に住む、ベッキーという2番目の飼い主となる女の子に可愛がられ、立派なレース犬になったブライトアイズは同じくレース犬の先輩、アルフィーと共にたくさんのドッグレースで勝利をおさめるとてつもなく足の速い犬になっていくのです。ここで物語が終われば「あー、めでたしめでたし」となるのですが違うのです。若くて伸び盛りの時はいいのですが誰しもが老いるということで、まず先輩犬のアルフィーがレースに勝てなくなり最後には足を引きずるようになると、ベッキーの継父(ままちち)は容赦無く怪しい業者にアルフィーを引き取らせて行ったのです。ママは、新しい飼い主のもとで幸せに余生を過ごすのだというけれど、嘘に決まっています。そこで我慢の限界に達したベッキーはブライトアイズを連れて家出を敢行します。ヒッチハイクをしたり長距離バスに乗ったりしてとにかく遠くまで来てみたものの小さな女の子と一匹で大丈夫なはずもなく、とうとうベッキーは大怪我をして病院に運び込まれます。救急車を矢のように追いかけ病院の前でひたすらベッキーを待つブライトアイズですが・・・ていう感じのお話なのですがこの本の面白いところは、あいだに犬による独白のページが挟み込まれているところです。それが妙に本人っぽくていいんです。
まぁ、本当のところ犬がどう考えてるかなんてわからないんですけどね~。でも、喋らないからこそどんな気持ちなのかな?とか何考えてるのかな?とか観察してわかってあげようとしているうちに愛おしくなってくるんですよねー。
なんていうことでしょう。今どきドッグレースなんてまだやってるところがあるの?昔の話なんだろうこれは。と思って、奥付けを見たらこの本2015年に出版されているんですよ!「えー!つい最近じゃないの!それにしてもイギリス人って賭け事がほんと好きなのね~」
それにしても、日本ではあまり見かけませんよね、グレイハウンドって。いっぱい走らせてあげなくちゃいけないから、狭い日本では飼うのは無理ですかね。
本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
みなさん、こんにちは。絵本と童話本の家 續木あかりです。
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