• 本屋のあかり
執筆者:続木あかり
2023.04.15

「本屋のあかり」紹介本『おさる日記』

『おさる日記』 和田誠 文 村上康成 絵 偕成社 1540円

この本は、お友達のお母様が教員時代に生徒たちに時々読んであげていたという物語です。今年の偕成社展の時に「懐かしい!私プリントに印刷されたものしか持っていなくてそれで読み聞かせてたのよ!なんだ絵本が出てたのね!!」と言って買われていました。この本を出版した偕成社の方によると、もうずいぶん昔に講談社から出ていた「日本のほら話」という本の中の一編をとても気に入った編集者が「これを一冊の絵本にしたい」と熱望し実現したのだそうです。1994年に出版された当時は話題となりよく売れたようです。絵本を手に取った時、なるほど売れるのも当然だと思いました。だって、和田誠さんが書いた物語だったんですもの。ほんとこの方、多才ですね。和田さんの絵もとても味があっていいのだけれど、この絵本ではあえてなのか村上康成さんが絵を描かれていますね。またこの絵がこの文章にとても合っていて、もんきちかわいいです。
このお話は、主人公の男の子の日記として書かれていて「×月×日・・」と続いていきます。友達のお母様によると「読んであげていて最後のオチを言った時に、えっ!!ってびっくりしてクスクス笑いだす子がいたり、ポカーンとした顔をして意味のわかっていない子が半分くらいいたり、その反応が面白いのよね~」なんておっしゃっていました。これ、絵を見せながら読み聞かせしてあげていたらきっともっと面白かったのでは?と思える良い絵本です。今回は、最後まで紹介してしまいますが、みなさんも聞いたらきっと他の人に読んであげたくなりますよ!

こういうお話を読むと、書いた人の頭の中って一体どうなっているの?って気になりませんか?私最近聴いた、ある作家さんの講演会の中で、一番心に残ったの話がありまして、それは物語を創作する時の話でした。「例えると、何もない水の表面にポツンと油を垂らしてその波紋から深く分け入って潜って潜ってそこにある世界の、ある種の気配や匂い、色などのを全て描き出したいと思って夢中で書いていく感じなんです。書く前からもう大体の航海図は頭の中にあってそれに従って、道を逸れそうになったら修正していく、ということを繰り返しながら進めていくんです。だから私にとって書くことは自己表現ではないのです。でも、書いているうちにやはりそこには人柄やその人のいろんなものが自然と滲み出てきてしまうものなのだと思います。」ですって。物語とか絵とか曲とかなんでも、ゼロから何かを生み出すことって大変そうだけど出来上がった時の満足感凄そうですよね。いいなー私も出来たらなー。と思ったエピソードでした。

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本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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