「本屋のあかり」紹介本『動物会議』
『動物会議』 エーリヒ・ケストナー ヴァルター・トリアー絵 池田香代子訳 岩波書店 2750円
もう何度も、ケストナーの作品についてはこの番組でとりあげているのですが、私はこの作品を今の時代だからこそもう一度、読み返しそしてみなさんにもぜひ読んでいただきたいと思って、ご紹介させていただきます。内容は簡単です。「人間さまが戦争を繰り返し、難民問題や飢饉などの問題が起こっているにもかかわらず、一向に解決しない現状に頭にきた動物たちは「これではこれからの世代を担う子どもたちがかわいそうじゃないか!」と、一斉に集まり、人間たちに声明を発表します。しかし、各国のお偉いさんたちは彼らの言うことに全く聞く耳を持ちません。そうこうするうちに、世界中の子どもたちが忽然と姿を消すという事態にまで陥った時、ついにお偉いさんたちは万年筆を取り出して条約にサインしました。
ちょっと違う話になってしまうのですが、私、最近観た「ウーマン・トーキング」という映画の中でとても心に残った言葉がありました。ある事件の話し合いのために女たちが集まり議論が進んでいくのですが、ついつい「明日からどう生きていけばいいのか?」など不安がよぎり、「やっぱりどうにもならないのかも?」という気配が濃厚になってきた瞬間、一人のお婆さんがこう言い出すのです。「私ね、家の前のガタガタ道を二頭立ての馬車で進んでいたの。砂利道はクネクネしていてまっすぐには進めず、馬たちも危なっかしく進むもんだから私、振り落とされるんじゃないかと恐ろしくなっていたの。その時、思い切って頭を上げて遠く続く一本道の先をじっと見つめてみたの。そしたら、スッと不安が消えてね、あらっ行けるわ!って思えたのよ」 どうですか?なんてことない話にも思えますが、想像力とか希望ってこういうことなのかな?ってこれを聞いて思えたんです。
本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
みなさん、こんにちは。絵本と童話本の家 續木あかりです。
この番組は、毎回私が気になった絵本から読み物まで、内容を読んだりしながらご紹介していきます。そして、オススメの一曲も。お気軽に聞いていただけたら嬉しいです。
毎週月曜日の9:30から15分間。木曜日の14:00と土曜日の17:00に再放送があります。