「本屋のあかり」紹介本 『綱渡りの男』
256 『綱渡りの男』 モーディカイ・ガースティン 作 川本三郎 訳 小峰書店 1,600円
この本は、ニューヨークのワールドトレードセンター(世界貿易センタービル)通称ツインタワーがほぼ完成した翌年に、この二つのビルにロープを掛けて渡った若きフランス人大道芸人のお話です。
このツインタワーは、2001年のアメリカ同時多発テロ事件の時に標的とされ、飛行機が突っ込んで破壊されました。
今はなきツインタワーの思い出として作られたこの絵本が、実話だということに感動してしまいました。
このフィリップ・プティの挑戦は、後に「ザ・ウォーク」というタイトルで映画化もされました。
この絵本は、絵も素敵なのですが作りもとても良くできていて、フィリップが綱渡りを始めるシーンでは、折り込まれたページを広げると大きな画面いっぱいに地上400メートル上空からの景色と、細いワイヤーを渡るフィリップの姿が描かれ、ゾクゾクっとしてきます。そして、彼はこう思うのです。「ここには、ぼくひとり。なんて幸せで自由なんでしょう!」
次のページも折り込まれたページを広げると、今度は縦に画面がひろがり下の地面からタワーを見上げる人たちとはるか高くそびえ立つツインタワーと米粒ほどに見えるプティの姿が描かれているんです。
まだ出来立てホヤホヤの時に「ここ渡ってみたい!」と思った気持ちを即実行してよかったですね。フィリップ・プティさん。だってもうこのビル無いんですもんねぇ。
ほんと、驚きましたよねあの事件。今でも覚えてます。私ちょうど大学生でずーとテレビに釘付けでした。
でもどうせなら、プティさんがこのビルを渡るところを見たかったなぁ。見ていて、こちらの方が人々を幸せにしますもんね。
本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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