「本屋のあかり」紹介本 『小さな家のローラ』
284 『小さな家のローラ』 ローラ・インガルス・ワイルダー 作 安野光雅 絵・監訳 朝日出版社 2750円
この物語は、実際に作者のローラ・インガルス・ワイルダーが1870年代の開拓時代に少女時代を北アメリカの森の中で送った経験を、いきいきと描いた作品です。私の母はこの本が大好きなのです。母も子ども時代を北海道の富良野で過ごしているので、この生活の様子をとてもリアルに感じるのだそうです。私も、すすめられて小学生の時に読んではみましたが、全く面白さがわかりませんでした。「なにこれ、全然お話が始まらないじゃない!」と文句を言っていたと母が証言しています。そうなんです。このお話、これといって何が起こるわけでもないのです。冒険ものでも魔法使い系でもありません。ただただ、開拓時代に生きるお母さんのキャロラインとお父さんのチャールズと長女メアリー、主人公ローラ・インガルス、赤ちゃんキャリーがビッグウッズの大きな森の中で、家族団結のもと、秋はたくさんの保存食を作り冬に備え、冬になるとクリスマスに向けていろいろと準備し、春になったらダンスパーティがあり、サマータイムにはチーズを作り、穀物の収穫も始まります。そして、いつも寝る前にはお父さんがバイオリンを弾いたり、お話を聞かせてくれるのです。こんな感じに、毎日を地に足をつけて生活する様子が丁寧に描かれていくのです。
そういえば、昔テレビドラマにもなっていましたよね?父は、今そのドラマをアマゾンプライムで見ては、泣いています。
私が今回もう一度この物語を読んでみようと思ったきっかけは、朝日出版社さんから安野光雅さんの絵と監訳された本を見つけたからです。手に取ってパラパラめくってみると、なんとまあ可愛らしい挿絵がたくさんホントに各ページごとってくらい描かれていてそれがまた素敵なんです。ラジオで紹介するのがもったいないです。見てもらいたい。文章で説明されてもいまいちピンとこないロングライフルの掃除の仕方や解体される豚の肉の部位の絵やダンスパーティーでお母さんやおばさん達が着るドレスの模様やごちそうの数々。物語なんてあってないようなもの、この挿絵だけでスラスラ読めて、大満足でした。だからわかったんです、私。母が大好きだったのは、自然と共に生き、日常の何気ない生活を自分の手でしっかり作りあげ、精一杯楽しむというこの厳しいけれど幸せそうな毎日であり、それに夢と憧れを持って読んでいたのだということ、そこにこの本の最大の魅力があったのだということを今、読んでみて知りました。そして、私もそれがわかるほどには歳をとったということですかね?
本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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