「本屋のあかり」紹介本 『宝島』
273 『宝島』 R・L・スティーブンソン作 坂井晴彦 訳 寺島龍一 画 福音館文庫 850円
みなさん、「ワンピース」って漫画ご存知ですか?たぶん、たくさんの人が「知ってる」とか「大好き」とかおっしゃるのではないでしょうか?特にドンピシャ世代の年齢の男性なんかは、「僕のバイブルです」なんていう声もよく聞きますね。「残念ながら私、読んだことなかったのです。一冊も。」「あー、なんか仲間達とお宝を探しに航海する話でしょ」なんて言ったら「それだけじゃなくて、もっと深い友情とか成長の物語なんだよ!」なんて力説されたので『ワンピース エピソード1 東の海編』1~12巻を買って読んでみました。
ごめんなさい。途中で投げ出してしまいました。「だめだ。全然面白いと思えない。」「読むのが苦痛だ。」となってしまいました。
「どーして~。私まんが大好きなのに。めっちゃ早く読めるのに。」と、なんか悔しくなりました。たぶん小学生とか中学生くらいの時に読んでいたら楽しかったのかも。もし男の子に生まれ変わったとしたら、もう一度読んでみたいなとは思いました。
そんなこんなでなんか、モヤモヤして仕方なかったので、同じ宝探し物よもーっと、『宝島』読破してみました。
この本も「海賊」や「宝」が出てくる冒険ものですが、なんせイギリスで138年前に出版された本なので、世界中にずーっとファンが居続けるまぁ、不朽(ふきゅう)の名作ってやつですね。
この物語が、10代の男の子を夢中にさせるのには訳があります。作者のロバート・ルイス・スティーブンソンは、祖父も父もそうであったような建築技師にはならず弁護士となるのですが、幼少の頃から体が弱く、北国スコットランドの厳しい気候が体に合わずに肺結核になってしまい、南フランスに滞在し療養するなどしているうちに好きな文学を一生の仕事とすることになりました。そして、子連れの人妻ファニー・オズボーンというアメリカ女性と深い仲になり周囲の反対を押し切って結婚します。
そしてここからが肝心、(あとがきを少し読む)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私も、この宝島の地図を何度も見返しながらこの物語を読みました。
やっぱり、目の前にいる誰かを喜ばせたい、ともに楽しみたいと思って描かれる物語って伝わるんですね。『クマのプーさん』も『あおくんときいろちゃん』もずっと残り続けるお話って、けっこう自分の子どもや孫に書いてあげたって物語多いですよね。彼はその後、44歳で亡くなっています。
私、冒険とか戦うシーンとか興味ないので苦手だなと思っていたのですが、この本はそういった場面よりもっと細部の、敵と向かい合った時の具体的な交渉術とかプライドをかけた紳士的な振る舞いなど教訓めいてはいないけれどなるほどと教えられることがたくさんありました。特に、衝撃を受けた場面は、船が宝島に着くや否やジョン・シルバーたちの謀反により敵と味方に分かれてドンパチと戦うことになり、それぞれに怪我をする者が出てきた時に、唯一の医者であるリブジー医師は、その職業的倫理観から毎朝負傷した患者のためにわざわざ敵の元に往診に行くんですよー。そして、その間は休戦状態になるんです。なんだか素敵な戦いではないか!と思ってしまいました。
こんなふうに、仲間を信頼することや裏切られることや一人の男の子が様々な体験を通して成長していくこと、たくさんの大切なことが詰まっている本だと思うので、ぜひ、文字が小さいだの本が分厚いだの言わずに読んでもらいたいなと思います。いろんな出版社から出てますのでお好みで。でも、ダイジェスト版みたいのを読んでしまうと面白さ半減するので気をつけてくださいね。神は細部に宿るのように、面白みは細部に宿る、ですからね!
この本は、誰かに読んでもらうのではなく、自分で読んで、おもいっきりこの冒険を楽しんでもらいたいなと思います。ワンピース100巻読めるならこんな本ちょろいですよ!
本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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