• 本屋のあかり
執筆者:続木あかり
2022.04.18

「本屋のあかり」紹介本 『ブラックボックス』

『ブラックボックス』 砂川文次 講談社 1,705円

この本は、2021年下半期の芥川賞を受賞された作品です。
私、芥川賞ってほぼほぼ私小説だと思って読んでしまうので、この本も読んでいる間はずっと、こんなに自分の置かれている状況を客観的に分析できているのに、なぜか突如としてキレてしまって大変なことになったりしてかわいそうに、悲惨だわ~。なんて思いながら著者に同情を禁じ得ないみたいな感情を抱いていたのだけれど、読み終わった後にちょっと調べたら「なに!この人、元自衛官で今は地方公務員で結婚してて子どももいるの?なーんだ、私より全然まともで幸せな人生送ってるんじゃないの!なんて、こっちが勝手にキレてしまいましたとさ。
選考委員さんが「現代のプロレタリア文学だ」と評したそうですが、そういう意味では主人公が生身の人間として感じられたということでありそこが素晴らしかったんだということですよね。著者は自転車が大好きだということから身近なところで、最初、自転車便の場面から始まるのですがどんなもんなのかな?とお試しで読み始めると止まらなくなっていつの間にか終わってるという作品でした。
内容としては、主人公サクマは、メッセンジャーとして働き、一緒に住むまどかと共に都会でギリギリの生活を送っているのだが、彼には目の前の面倒なことをすぐに先送りし、いざ問題が起こった時には、些細なことでキレて暴力的になってしまう。というクセがあるのです。これについては、たぶん病院に行けば発達障害と診断される人なのだと思います。これによって彼は、とうとう刑務所に入らなければならない罪を犯してしまうというお話です。
私がこの本で、一番気になったところは、サクマがまどかと出会った当時に働いていたコンビニで起こった騒動です。なんか、今の世の中って色々あるのはわかるんですけどイライラしている人ばっかりいるような気がして。この本でもそんなことが起こってます。わざと人にケンカふっかけるような言い方、どうしてするのかな?と、読んでいて悲しい気持ちになってしまう場面です。皆さんはどう思われるでしょうか?

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本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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