• 本屋のあかり
執筆者:続木あかり
2022.06.04

「本屋のあかり」紹介本 『きのね』上・下巻

『きのね 上・下』 宮尾登美子 新潮文庫 ¥1606 

この本は、私なんかより全然小さい時から本をいっぱい読んでいる、いわゆる活字中毒の大先輩から教えてもらった本です。「めっっちゃドロドロしててしかも実話なんだよ~」とオススメされて読んでみたら、ほんとすごかったです。歌舞伎役者の世界のお話なのですが、私、歌舞伎のこと全然知らないし、しきたりやその世界の用語など出てきてよくわからないところがところどころにあるのですがそれにも増して面白くてページをめくる手が止まらないという感じでした。まあ絶対に、私はこの世界では絶対やっていけないなということがわかりました。このお話がなんと、1988年に朝日新聞で連載されていたなんて。今じゃ考えられないことですよね。
お話しとしては、第二次世界大戦前の昭和8年、うちが貧乏でやっとこ女学校を卒業した光乃(みつの)は、菊間流の家元、竹元宗四郎一家の住み込み女中となります。(ここ名前が皆、微妙に変えてあるのですが詳しい人にはすぐピンとくるらしいですよ)そして、ここから光乃は、3、この家の長男、雪雄付きとなってから壮絶な人生の幕開けとなるのです。まぁ、この男とんでもなく世渡りベタの不器用者で病弱で、しかも癇癪持ちですぐ手が出るんですよ!そりゃないだろうに、かわいそうだよ。という場面がたくさんあるんですが、唯一の救いだと思うのは、この当代きってのモテ男が光乃をちゃんと妻としてお披露目したことですかね~。あとは、こうして本にもなったということですかね。そうでもしないとホント報われないですよね~。でも、光乃さんの立場になって考えてみると、とんでもなく大変な毎日だけれど、泣いて帰る家も無いし、じっ~と耐えるしかなくて毎日、献身的に尽くすうちに、子どもまでできてしまい、最後は無理が祟って病気に・・・なんていう一生なのでしょうか。特に、この方が一人で家で長男を産むところなんか壮絶ですよ!著者はこの時かかわったお産婆さんにまで話を聞いて書いたというだけあって強烈です。
最後に、この文庫本に収録されている、女優の檀ふみさんが宮尾登美子さんと対談された時のお話しがとっても面白かったので読んでみます。・・・・・

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本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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