「本屋のあかり」紹介本 『マスクをとったら』『ことばのかたち』
『マスクをとったら』 いりやま さとし 講談社 1100円 『ことばのかたち』 おーなり由子 講談社 1485円
最近、「やるベンチャー」で中学生を男女合わせて4人預かりまして、3日間、職業体験していただきました。コロナのせいでここ2年ほどなかったのでちょっと緊張してしまいました。こんな世の中で中学生にどんな変化があるのだろうか?とか多分毎日不自由な生活をしているのだろうから、できるだけいろんなことを体験させてあげたいな、なんて思って受け入れたのですが、とても素直で、ちょっとしたことも楽しんで一生懸命にやる姿を見ることができて「負けてないな中学生」って私の方が感動してしまいました。変わっていたのは、最初から最後までマスクを付けっぱなしだったことで、一人一人の顔が全然わからなくて名前を覚えるのに苦労したことですかね~、後はマスク越しに小さい声で喋りかけてくれるので何を言っているのかわからずちょっと焦ったかなって感じですね~。どんな顔してるのかなってとても気になったのでお弁当の時間に黙食してる様子を観察してました。「あっ、この子こんな顔してるんだ!可愛らしい。」なんて。そういえば昔やるベンチャーで来た子で「一年中マスク外すことできません。」って言ってマスクし通した男の子いたなぁ。なんて思い出したりしました。あの時は「かわいそうに、この子病気だわ完全に。」なんて思ったけど。今はこれが普通ですもんね~。いつになったら外せるんでしょうかね?もはや、外食する時にマスク外すとちょっと恥ずかしくなりますもんね。変な感じ。
そんなこと思っていたら、見つけちゃったんですこの絵本。『マスクをとったら』です。表紙にシールがはってあって「とくダネで紹介され話題に!」って書いてあります。ですよね、きっと飛びつきますよねテレビの人たち。表紙にはパンダさんのマスク姿が・・ページをめくると、マスクをしたカエルさんが「マスクをとったら なにしたい?」と聞かれています。次のページで「すいすい およぎたーい!」お次はマスクしたライオンさん「マスクをとったらなにしたい?」「がおーって さけびたーい!」そうなんです。次々とマスクをした動物さんに「マスクをとったらなにしたい?」って聞いていくんです。最後のページにはたくさんのマスクをした子どもたちが「マスクをとったらね・・・」「げんきいっぱいあそびたーい!」ですって。つい最近ですよね「体育の時間はマスクを外していい」ということになったのって。私、コロナにかかることももちろん大変なことだとは思うのですが、絶対にそれよりもこんな小さな子たちが毎日マスクして生活しているということの方が後々のその子たちの人生においてマイナスなことがたくさん出てくるんじゃないか?って危機感抱いてます。四六時中人の表情がわからないのってやっぱり変ですよ、精神的にもおかしくなるし集団生活で学ばなきゃならない事が学べないような気がします。気の毒としか言いようがないですよねホント。言葉以外の意思疎通をどうやって図っているんだろうとか人の感情をどうやっておしはかっているのかな?とか、一番多感な時期なのに。まぁ、でもそれはマスクをしていてもしていなくてもおんなじ事か?とも思いますけどね。そうですよね、うん、どっちにしろ難しい。なんて時に見つけたのがこの本、『ことばのかたち』です。表紙の絵は淡ーい水彩画で一本の木に、色とりどりの綺麗な葉っぱがついています。ページをめくると・・・・・・
こんなふうに次々といろんなことばのかたちが出てきます。もちろん「だまってる」ということばのむこうにゆたかな森がひろがっているかもしれないともかいてあります。そして、カバーの裏側にはおーなり由子さんの言葉としてこう書いてあります。「しゃべるのがへたくそで、もどかしい時・・・言葉のむこうの気持ちを見せられたら、と思うことがあります。言葉は、たっぷりとある心の、ほんのちょびっと。はしっこのかたち。言葉が目に見えなくてよかったと思うこともあります。その時わたしは、その言葉のかたちを感じているのでしょう。知りたいのは、言葉そのものではなく・・・・どこにも書いていない消えてゆく言葉の、そのむこうのけしき。温度。心どうしが、すっと近づくような。ひとは、思っているよりも、ずっとたしかに、言葉のむこうをやりとりする力を持っている気がするのです。
コミュニケーションの手段としてのことばを考えてみるとホント不思議ですよね~ことばって。でももし、この絵本みたいにことばが世界中の人に同じ形として見えるとしたら、言語の違いにとらわれずにわかるから楽ですよね?日本語とか英語とかスワヒリ語とか関係ないですもんね。そういえば最近、映画とかドラマ観ているといろんな言葉を話す物語って多くなっていませんか?役者さんが急に英語喋ったり韓国語で会話したりしませんか?なんというか、国境を超えているというか。昔からポツポツとはありましたがもっと境目がない感じというか。世界観も広がる気がします。例えばちょっと前に観た「アネット」という映画は、フランス人のレオス・カラックスが監督で私の大好きなアメリカ人俳優のアダム・ドライバーが出演していて、そこに古舘寛治(フルタチカンジ)や水原希子が出ていました。もちろん英語の作品でしたけど。今ハマっているWOWOWのドラマ「Tokyo Vice」は、マイケル・マン監督が全編日本で撮影したハリウッド作品となっていてアメリカ人俳優も日本人俳優も出演していて英語も日本語も韓国語も飛び交います。一番最近観た「ユンヒへ」という作品は日本人と韓国人の女性のお話で、日本語も韓国語も英語も喋っていました。それらが別段違和感もなくスッと入ってくる気持ちのいい作品ばかりです。みな良い作品だなと思いました。まぁ、セリフを覚える俳優さんにとっては大変なことかもしれませんけどね。これって、なんとなくその作品を見ている方にとっては、そこで話されていることばではなくその先の空気感や意味を感じ取っているって気がしているんですけど、どうでしょう?・・・・・
本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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