「本屋のあかり」紹介本『ハンチバック』
『ハンチバック』 市川沙央(さおう)文藝春秋 1430円
この本は、2023年7月に芥川賞を受賞した作品です。
タイトルの「ハンチバック」とは背中の曲がった「せむし」のことです。
難病の筋疾患、先天性ミオパチーを患う重度障害の自身を投影した女性の視点から、社会の現実を突きつけてくるお話です。著者は、当事者を主体にした文学作品が見当たらず「当事者性を意識して、日ごろ思っていることを書いた」そうです。でも自身と重なるのは30%くらいだというのですが、やはり、受賞会見などを見てしまってから読んだので、ほとんど主人公と著者を重ねて読んでしまいました。内容もさることながらこの方、インタビューでの言葉がとっても辛辣で面白かったです。芥川賞の受賞会見では「重度障害者という当事者性を出すことはOKです。当事者がいないことを問題視して書いた小説ですし、逆に2023年になった今、芥川賞に重度障害者が初めて受賞したということを、みんなに考えてもらいたいと思っています。」と、深くうなずくしかないこともおっしゃってますし、もうひとつ「『ハンチバック』は私が産んだ小説ですが、種付けをした『父』と言える存在が二方います。ひと方は、私の懇願のお手紙をスルーなさった出版界。もうひと方は、私のライトノベルを20年落とし続けたライトノベル業界。この場をお借りして、御礼申し上げたいと思います。その方々がいなければ、私は今、ここにはいません。怒りだけで書きました。『ハンチバック』で、復讐をするつもりでした。私に怒りを孕ませてくれてどうもありがとう。でも、こうして今、みなさまに囲まれていると、復讐は虚しい、ということもわかりました」この言葉も著者の察するにあまりある色々な感情の渦を見たようでドキッとしました。しかし最後に語った言葉が一番の衝撃でした。彼女は「社会に訴えたいことは「読書バリアフリー」が進んでいくことです。」という言葉です。この読書バリアフリーという言葉に私はハッとしました。自分の無知さと浅はかさに恥ずかしくなりました。これについては
この本、すごく短いお話なんだけれども、考えさせられることがたくさんある重い本でした。文体はとってもライトなんだけどね。
本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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