• 本屋のあかり
執筆者:続木あかり
2024.06.29

「本屋のあかり」紹介本『おしいれのぼうけん』『はじめてのおるすばん』

『おしいれのぼうけん』さく ふるたたるひ たばたせいいち 童心社 1430円     『はじめてのおるすばん』しみずみちを・作 山本まつ子・絵 岩崎書店 1650円

今日ご紹介する本は、2冊とも50年前に出版された古い絵本ですが今でもよく売れています。『おしいれのぼうけん』は、1974年初版発行で2022年の段階で249刷りで、『はじめてのおるすばん』は、1972年初版発行で2022年の段階で145刷りしています。きっと、子どもの頃に読んでもらって印象に残っていて大人になり親になった時に我が子にも読んであげたいひいては孫にも読んであげたいと願う人たちが買い続けてくれている結果なのだろうと思います。

でも、ここでふっと私の心の中に疑問が残るのです。それは、この絵本を2冊とも手に取って読んでみてください。きっと感じるはずです。「このお話し、今の時代じゃあり得ないし、大問題じゃない?」って。

『おしいれのぼうけん』は、さくらほいくえんに通う、あきらとさとしがお昼寝の時間に、些細なことからケンカをはじめ、みずの先生が何度静かにしなさい!と言っても聞かなかったので、お仕置きとして押入れに閉じ込められるところから始まる冒険のお話です。「はじめてのおるすばん』は、3歳のみほちゃんが、お母さんに「きゅうにごようができたので、ひとりでおるすばんをしてちょうだい」と言われるところからはじまるドキドキハラハラのお話しです。そうです、要するに2冊とも世間から「とんでもない園!とんでもない親!」と言われ事件になりかねない炎上事案なのです。見ようによっては、ホントとんでもなくて『おしいれのぼうけん』では、暗くなった押入れから戸の破れ目を探し出し覗くと先生が手でその穴を隠したり、中からどんどん蹴飛ばすと、きむらせんせいとみずのせんせいで、あせぐっしょりになっておさえつけるのです。『はじめてのおるすばん』では、おるすばん中に郵便屋さんが来てピンポーンって鳴らすし、次に来たしんぶんやさんはピンポーンとした後に、扉についているポストのふたをギコギコと持ち上げて中を覗き込むんです。みほちゃんは「あ、おばけ・・・」と思いました。これなんか、大人がやりすぎなんじゃないのか?とも思ったり。

でもでも、大冒険を繰り広げた後のスッキリと誇らしげな、あきらくんとさとしくんとみほちゃんの顔を見ると、「ああ、良かったな!」とホッとして読み終わるのです。だからこそ、大人がなんでもかんでも、すぐに先回りして、これはよくないと、切り捨てたり、隠したりするのは、それはそれで子どもたちの成長を阻害しているのではないか?とも思いました。
今のこの大炎上時代に、この絵本を買ってくれる大人たちはどういう感情を抱くのでしょうか?

『おしいれのぼうけん』については、先日、出版元の童心社が「まっくらやみ朗読会&トークイベント」を開催し、ゲストとして又吉直樹さんが登壇しました。残念ながら私は行けなかったのですが、代わりに行ってくれたお友達が詳細に報告してくれたので、それを読むと、「さすが、又吉、そうだよね!!」と唸ってしまいまいました。

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本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
みなさん、こんにちは。絵本と童話本の家 續木あかりです。
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毎週月曜日の9:30から15分間。木曜日の14:00と土曜日の17:00に再放送があります。

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