「本屋のあかり」紹介本『ノマドランド』
250 『ノマド 漂流する高齢労働者たち』
ジェシカ・ブルーダー / 鈴木素子 訳 / 春秋社 / 2,400円
先日、「ノマドランド」という映画を観にいきました。
様々な事情で、アメリカの荒野をキャンピングカーやバンで生活しながら、夏はキャンプ場や果実の収穫場、冬はAmazonの倉庫などで働く、主に60歳以上の高齢のワークキャンパーたちのお話です。
この本は、その映画の原作本です。本を読んでびっくりしました。映画の中に出てくる人たちが続々と登場してきて、「なに?主人公の俳優以外はほとんど素人が本人役で出てたってこと?」ってことを知り、逆にすごいなと思ったのが主演のフランシス・マクドーマンド、完全に他のワークキャンパーに溶け込んでましたよ。それに、映画では、国立公園の雄大な自然を臨みながらみんなで焚き火を囲んだりして、自由だな〜って感じで「なかなか面白そうだな、私もこんな暮らしを体験してみたいものだ!」なんて羨ましく感じちゃったりしたのですが・・・。
本を読んでみて、そんな妄想はぶっ飛びました。これは大変。彼らは、「自分たちはホームレスではない。『所有』から解放された自由人なんだ」なんて、言ってますけど要は、広がりすぎた格差社会の、成れの果てではないですかこれは。
全く同じようにはならないけれど、昔からアメリカで起きていることは、10年後くらいには日本にも現象として起きてくるというではないですか!どうなるんでしょうね、日本も。
本を読んでいると、本人たちは結構楽しそうに暮らしているんですが、その背景にあるアメリカ社会の闇がどんどん見えてきました。深刻な問題ですよね。
他にもこの本を読んで大きな問題だと感じたことは、人々の消費に対する考え方です。特に、Amazonの行うネット販売は、労働問題や環境問題とかいろんな意味で悪であると思います。この本の中でもワークキャンパーのリンダがこう言っていました。
「Amazonで季節労働していると、自分自身の労働も、扱っている商品ができるまでの世界中の主に第三国での労働を考えるとアメリカは巨大な奴隷国家だと思う。」
「過激だとは思うけど、Amazonで働いていると、こんなことばかり考えちゃうの。あの倉庫の中には重要なものなんて、なに一つない。Amazonは消費者を抱き込んで、あんなつまらない物を買うためにクレジットカードを使わせてる。支払いのために、したくもない仕事を続けさせてるのよ。あそこにいると、ほんとに気が滅入るわ。」
もう本当に、人間って生まれてから死ぬまでの間にどれくらいの量のゴミを出しながら生活しているのかと考えただけで、生きていることが申し訳なくなってきちゃいます。
本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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