「本屋のあかり」紹介本 『アラビアン・ナイト』
『アラビアン・ナイト』上・下 ディクソン編 中野好夫 訳 岩波少年文庫 各836円
この本ホントに、読んでいてお話のテンポが良いので「それで?どうしたどうした?」とグイグイ引き込まれていって、途中でもうダメか?という展開になってもあら不思議、最後にはまあるくおさまるんです。特に、シンドバッドの冒険なんか、主人公のシンドバッドは一攫千金を目指して船に乗り込み航海に出るのですが途中、次々と災難が起きしかし幸運も重なり、無事に財産を増やして戻ってくるのです。しかーし、それでも満足できず、彼はその後も計7回も航海に出かけるんですよ!こんな感じに。・・・・・・・・・・・・・・・・・聞いてる人を飽きさせずに後味も良くお話を終わらせるってすごい短編小説の名手ですよね。
また、東の国々のお話しと書いてあるように、表紙の絵や挿絵もどう見ても顔が中国系だなという感じなのに、頭にターバンを巻いたりして描かれています。それについては下巻の最後に文化人類学者の西江雅之さんという方が、こう解説してくれています。『アラビアンナイト』には、アラビア語を話す人々が住む土地以外の場所から伝わってきた話も、多く含まれています。例えば『アラビアンナイト』すなわち『千一夜物語』の原形とされる『千物語』は、パフラヴィ語(中期ペルシャ語)で書かれていますが、それにはペルシャの話の他に、インドから伝わった話もたくさんまざっているのです。とくにペルシャについては『アラビアンナイト』全体の主役をつとめるシャフラザードも、物語の中で7回の航海ごとに大冒険をするシンドバッドも、その名自体がペルシャのものなのです。さらに、『アラビアンナイト』には、ギリシャなどの地中海世界、アフリカやインド洋の島々、シナ(中国からインドネシア、マレーシアあたりまでと思われます。)などを背景にした話も多く含まれています。例えば、当時のアラブ人にとっては、中国は遠くて不思議な世界でした。そこで、物語に出てくる中国は、全くの想像上の国となっています。と言うことです。
あと、多分皆さん、「アラビアンナイト」とか「シンドバッド」とか「アラジン」なんて聞くと、ディズニーの世界を思い起こすと思うのですが、これを読むとちょっと違いました。特にこの「アラジンと魔法のランプ」のお話は、まず、主人公の父親がシナ(中国)に住むムスタファという名の仕立て屋という時点で「え?」だし、その息子のアラジンは「怠け者で意地悪でろくでもない子ども」なんですよ!でも、そんな子が数々の失敗をし、慎重になっていき、学んでいくことでランプを手に入れ、そのランプの力をここぞ!というタイミングで使い、とうとうお姫様まで手に入れるというお話で、ランプの魔神もそんなに出てこないし、絨毯も出てきませんでした。とはいっても、まぁ私、ディズニーの方を見ていないのでそちらがどんなお話か、よく知らないのですけどね。
本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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