• 本屋のあかり
執筆者:続木あかり
2022.07.21

「本屋のあかり」紹介本 『マイホーム山谷』

『マイホーム山谷』 末並俊司 小学館 1650円

このノンフィクションは、著者が両親の介護を機に、介護ジャーナリストとなって以降ずっと取材をしたいと思ってきた人に出会うところから始まります。
まず、その人に出会う前から末並さんは山谷、通称ドヤ街に炊き出しボランティアとして通っていたのですが・・・・・・・
ここまで読むと、どんな素晴らしい人なのか!と思うじゃないですか!?そして、2018年8月、とうとう山本雅基さんのお宅に伺うのですが・・
現実は、想像のはるか斜め上をいっていました。山本さんは、現在、奥さんは失踪し、自身はアルコール依存症になり統合失調症も発症し、「きぼうのいえ」の施設長を解任され、生活保護を受けながらまさに介護する人からされる人へとなっていたのでした。
私、思うのですが、なんだか直感的にものすごい力で何かを成し遂げる人って一種の病気みたいな人多くって、協力者とか賛同者を説得するプレゼンとかアピール力がすごいのだけれどそれがある程度出来上がっていくとまた次にドキドキすることがやりたくなってしまうみたいな人、いるよなー。って。山本さんはその典型みたいな人なんですよね。自分でも言っています「昔から、食事も喉を通らないくらいに気持ちが沈んで部屋から出られなくなる日があるかと思えば、メキメキと力が湧いて、誰かのために生きなければとか世界の真理を見極めなければ、という気持ちになる時期もある。躁とうつを繰り返す。要するに僕には昔から双極性障害の気質があるんだと思う」と。
まぁ、ホント良い人なんですよ。悪い人ではない!だって実際に大学生の頃から小児がんなどの難病と闘う子どもと家族のために誕生したボランティア組織「愛の家」をNPO法人化するときの立ち上げから携わり、事務局長にまでなるんですよ。そこも解任されているのですけどね。その後も「オーラの泉」というテレビ番組で有名になった江原啓之さんと仲良くなり彼の支援で理想のホスピスを作ろうと土地まで用意してもらったり。でも、彼のことをすごいなって思うところは、作った組織が現在に至るまでちゃんと続いているっていうことです。必要とされていてその組織を守っている人たちがちゃんといるっていうことですよね。ただ何事かを成し遂げたいということではなく信念があるってことなんだということもわかりました。たぶんそこまでできたのが、ある意味、病気のおかげかもしれないし病気のせいだったのかもしれないなとも思いました。まぁ、読んでいて、えー!っていう驚きの連続でした。たぶん、彼自身に人間的な魅力があるのでちゃんとお世話してくれる人がいるんです。末並さんも取材に訪れていたはずなのにいつ間にか下の世話や引っ越しの手伝いまでしてあげていたりして。

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本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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