「本屋のあかり」紹介本『夢見る帝国図書館』
『夢見る帝国図書館』 中島京子 文藝春秋 2035円
この本、ちょっと特殊な構成になっていて、主人公の「わたし」が上野公園にある、国際子ども図書館に訪れた時に出会った「喜和子さん」とのお話しの合間に字体を変えて「夢見る帝国図書館」のお話しが挟み込まれているんです。慣れないとなかなかに読みづらい本ではあります。でも、我慢して読んでいくと最後の方で段々といろんな謎が解けてきて一気に面白くなってきます。
どんな風かといいますと、出会ってすぐに「わたし」がライターさんだと知ると「あんた、上野の図書館が、主人公の小説を書いて!」って喜和子さんが頼むんです。そして唐突に始まる明治時代からの図書館の歴史。江戸が明治にとってかわられる前に3回もヨーロッパに行っていた、福沢諭吉は「ビブリオテーキ(今でいう図書館)というものがなければ日本は近代国家とは言えないので、これをぜひ作らねばならない」と言うのです。そして紆余曲折ありながらも上野に帝国図書館ができた!というお話しです。そんな至極真面目なお話しの合間に、「あれっ?どっちが挟まれてんだっけ?」まぁいいか。って感じです。
そして、喜和子さんの幼少期からの複雑な生い立ちが、男尊女卑の問題や同性愛問題などに絡まれて明らかになっていくんです。本好きの人には興味のある話もたくさんでてくるのでおすすめです。
最後に、喜和子さんが昔、戦後の混乱の中、家出をして一時期、上野の葵部落というところでゲイカップルに拾われバラック小屋で暮らしていた時のことを書いた文章を少し読んでみます。その後、再婚した母の暮らす宮崎に帰ることができ、結婚して娘を産むも、我慢できずにまた家を出て上野で暮らすようになる、喜和子さんにとって、一番楽しかったころの思い出を書いています。
美術館として、動物園として、はたまた図書館として。何度も行ったことのある上野のあの場所たちの歴史が知れて楽しかったです。
本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
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