• 絵本のコラム
執筆:あかり
2021.04.26

たくさん売れた、のりもの絵本

のりもの絵本というジャンルに思うこと

 本の家の奥に事務局があるNPO時をつむぐ会では、子育て支援「ぴよぴよの会」がもう20年以上前から活動しています。高崎市内はもとより群馬県内の各地に赴き、てあそび、読み聞かせ、リズムあそびなどしながら未就園児と親の子育てを支援しているのですが、その昔からどこに行っても大人気なのがこの絵本『カンカンカンでんしゃがくるよ』です。特に1歳半から2歳くらいの男の子には絶大な人気があり、たくさんたくさん売れました。

 まず、ほとんどの男の子が通る道、乗りものの絵本であること。その中でも踏切好き(電車が好きなので、毎日お散歩がてらに家の近くの踏切まで通い、ずっと眺めているという子は案外多いのです。)にはたまらない表紙、そして読み進めると湘南新宿ラインとおぼしき電車が通るのです。完璧!!
 お店でも、「まだ小さいのに電車が大好きなんです。どうしたらいいでしょう?」なんてお客様にオススメしてハズれたことがないくらいです。逆に、「この絵本ばかり読んでくれと言われて困っているので他に同じくらい食いつく絵本を教えてください。」と言われてどうしよう、とこちらが困ってしまいます。

 出版社の方でも、きっと、たくさん売れたので味をしめたのか、20年ほど経ってから、続編というかほとんど内容を変えずに(湘南新宿ラインが二階建てになっていました。また、本の形を縦長から横長に変えてありました)『でんしゃだ、でんしゃ!カンカンカン』という題名で出版したのです。私は、「こちらの方が電車の長さもわかるし、すごい!前よりもっと売れるんじゃない?」なんて思っていたのですが、なぜなのか、30年も前に出版された方がいまだに売れ続けています。

 乗り物の絵本というと、図鑑のようなたくさんの種類の電車や車がただ並んでいるような絵本を買い与える方が多いのですが、そこにハマるとなかなか次に、ストーリーのあるお話を聞くという段階に進めない子が多いような気がします。また第一に、私はそれでは一緒に読んであげる方が楽しくないのではないか?と思うのですよね〜。少しずつこういった短いストーリーのある絵本も入れていって欲しいです。乗り物が主人公の物語ならば、すっごく長くても集中して聞いていられるという子は、案外多いのですよ。ぜひ、挑戦してみてください。

 最後に、「乗り物の本ばかり読みたがって困る」という声をよく聞くのですが、何かに特別夢中になることは後に、一つのことを研究するような立派な研究者となる布石なのだ!と言っている方がいました。そう思うと、上手くそのような思考を伸ばしてあげたいなとも思いますし、困ったな!という気持ちも薄らぎますよね。ただし、そのことだけ!にならない工夫も必要だと思います。

あかり
あかり

本屋のあかり(Akari Tsuzuki)
みなさん、こんにちは。絵本と童話本の家 續木あかりです。
この番組は、毎回私が気になった絵本から読み物まで、内容を読んだりしながらご紹介していきます。そして、オススメの一曲も。お気軽に聞いていただけたら嬉しいです。
毎週月曜日の9:30から15分間。木曜日の14:00と土曜日の17:00に再放送があります。

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